2017年7月3日

モーツァルトに聞いてみたい

モーツァルト ピアノソナタ 第番イ長調K.331、冒頭に「ALLA TURCA (トルコ風)」と書かれた第3楽章は、とても有名な「トルコ行進曲」です。


この曲の作曲年ははっきりしておらず、1778年パリで作曲されたという説と、1783年にウィーンで作曲されたという説があります。
現在は、どちらかと言うと1783年の説が有力です。
その当時、オスマン帝国が軍隊と一緒にメフテルハーネ(トルコ軍楽隊)を連れて来ました。
管楽器や打楽器を華やかに奏でるメフテル(トルコ軍楽)のインパクトは絶大で、ウィーンではトルコブームが起きました。
モーツァルトの「トルコ行進曲」は、メフテルから影響を受けて作られた曲で、左手は太鼓の音とリズムを表しています。

さて、話は、先日のお買い物中。
お店のBGMにモーツァルトの「トルコ行進曲」が流れていた時のことてす。

あれ?音が違う…
BGMがミスタッチするはずないので、これは私の譜読み間違い?

「トルコ行進曲」は、昔、ヤマハ株式会社さんでお仕事をさせていただいていた時に何度もイベントで弾いていたので、これはまずい!と思い、帰ってすぐに楽譜を見てみました。

問題なのは、55小節目上段の第4音。
私が弾いていたのは、ファ♯。
BGMは、ラ。
どっちが正しい?


実は私、子どもの頃のレッスンで「トルコ行進曲」に出会わなかったので、きちんと練習したことがなく、譜読みして仕上げるのはヤマハのお仕事が初めてでした。
普段、モーツァルトを弾く時は、ヘンレ版かウィーン原典版を使っているのですが、ヤマハのお仕事だったので、ヤマハの電子ピアノを買った時に付属品だった楽譜(有名な作品ばかりを集めた曲集、もちろんヤマハの編集)を使って仕上げていました。

さて、楽譜を見てみますと…


ヘンレ版は、ラ。
ウィーン原典版も、ラ!


これは本当にまずいです。
ヘンレ版とウィーン原典版にラだと言われれば、私の譜読み間違い?
冷や汗です。

ちなみに、ウィーン原典版の解説欄には、「イ音(ラ)よりむしろロ音(シ)。後の版の一部では、嬰へ音(ファ♯)に判読できる。」と書かれています。

それで、当時練習に使ったヤマハの楽譜を見てみると…



ファ♯なのです。
譜読み間違いではなかったので、少しホッとしますが、ここまでの多数決では負けています。
聞いてくださっていたお客さんの多くが、「この人、音間違えてるー!」とか思っていたのでしょうか…

他の出版社はどうでしょう。

全音楽譜出版社は、ファ♯ですが、「原典版ではラ」との注釈付き。
全音楽譜出版社の、2014年発見の自筆譜に基づく原典版では、ラになっていました。
そして、音楽之友社は、ファ♯でした。

ピアニストたちは、どっちで弾いているのだろう…
ちょっと聞いてみると、ギーゼキング、グールド、グルダ、バックハウス、ホロビッツ、フジコ・ヘミング、みんなファ♯で弾いています。
やった!一緒だーっ!

ちなみに、少し昔のテレビドラマ「のだめカンタービレ」でもファ♯で演奏されていました。

日本人ピアニストさんの演奏では、ラでの演奏も聞くことができましたが、やはりファ♯での演奏も多かったです。

私の感覚では、ヘンレ版かウィーン原典版を使っている人が多いように思うのですが、なぜ、ファ♯での演奏をたくさん聞けたのでしょうか。
もちろん、十分な数の演奏を聞いて統計をとったわけではないので、何とも言えないのですが。

ラで弾くか、ファ♯で弾くか、ちょっと研究が必要そうです。

先日レッスンへ行ってきました。
レッスンの終わり、先生に「トルコ行進曲」の音のことを聞いてみました。
先生は当たり前のように「fis(ファ♯)でしょ。」と。
尊敬する先生なので、ファ♯と言われて一安心。

ベーレンライター版を見せてくださると、ラ。
その上にossiaでファ♯の楽譜が。


ossia(オッシア)は、「または、もしくは」という意味です。

別の方からは、春秋社版はファ♯との情報。
まだまだモヤモヤが続きそうです…

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