2017年8月21日

どの楽譜を使うか

今のピアノの先生に出会ったのは、私が高校1年生の時。
初めてのレッスンで、J.S. バッハの平均律を見ていただくことになりました。

当時の私、楽譜は、地元のお店の店頭に並んでいる物が全てだと思っていました。
いろんな出版社があること、同じ曲でも出版社によって楽譜の書き方が違うこと、原典版というものの存在、何も知りませんでした。

ですので、何を弾くにしても、楽譜と言えば全音楽譜出版社か音楽之友社、春秋社くらいしか選択肢はありませんでした。
たまに見かけても、赤色のウィーン原典版とか。
バッハの平均律の楽譜を買う際には、白くてゴツい紙、しかも箱付きで高級そう!という理由で春秋社の楽譜を選んだような気がします。
その春秋社版の楽譜を持って、レッスンへ。


一度聞いていただいたあと、アドバイスがあったのは演奏ではなく、その楽譜…
「楽譜は、原典版を使いましょう。」
「???(原典版?)」
「ヘンレ版を買って来なさい。」
「ヘンレ版?」
「あら、知らない?青色の楽譜。」
「すみません、わかりません…」

結局、地元のお店でヘンレ版を見つけられず、先生が買って来てくださるという事態に。
画用紙のような表紙、中の紙は黄色くてザラザラ、全てがドイツ語…


春秋社版に書かれていた多くの指示が、ヘンレ版には書かれていません。
音符のみ。
バッハ自身は、音符以外の指示を基本的に書いていません。
原典版というのは、基本的に作曲家が書いた楽譜(意図したこと)をできるだけ忠実に再現しようとした楽譜のことです。


原典版以外の楽譜には、編集者の解釈でいろんな指示が追加されていて、アーティキュレーション (スラーやスタッカートなど)、強弱、テンポ表示などが追加で書かれていたりします。


先生が伝えたかったのは、まずバッハ自身が書いた楽譜から「読み取って」「考えて」演奏しなさい、ということ。
バッハの場合は、音符だけの楽譜から、強弱、フレージング、音色など全て読み取らなくてはいけないのです。
バッハのこと、時代、当時の音楽、ちゃんと勉強しなさい、と。

はじめのうちは、新しい曲に取りかかかる度に、先生に「どこの版を買えば良いですか?」と聞いていました。
1冊目として買う楽譜は、バッハならヘンレ版、ベートーヴェンのソナタもヘンレ版、ショパンのエチュードはパデレフスキ版を指定されました。

ペータース版、ベーレンライター版、ブージー&ホークス版、デュラン版、エキエル版…
レッスンでは、いろんな出版社が登場しましたが、基本的に海外版で、先生から春秋社版の話が出ることはなく、買うことがありませんでした。

そのうち、楽譜は輸入版を買えば良いのかと勘違いし、バッハの弾き方を参考にしようとブライトコプフ版を買ったり…
ちなみに、ブライトコプフ版の平均律の楽譜には、非常に多くの指示が書かれ、黒色の割合が多くて混雑しています。
同じ曲には見えない…、しかも、なんだか難しそうに見えます。


先日レッスンへ行った時のこと。
リストの楽譜、ショット版とヘンレ版の書き方があまりにも違うという話をしながら楽譜を見比べていたら、先生が「春秋社はどうだろう!」とおっしゃって、春秋社版を出してこられました。

春秋社版?
先生は、春秋社版も参考にされているそうなのです。
いろいろある版の中の一つの解釈として、たまに見るそうです。
日本人に合う指使いが見つかったりするそうで、ドイツにも持っていかれたとか…

春秋社版を見てはいけないと言われていたわけではなかったのです。
長年の勘違い…
楽譜の選択肢が増えました。
これからは春秋社版も参考に勉強します。

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