2025年9月13日

《今週のレッスン Vol.463 9/13》 調号が抜けていますが

バイエルの練習曲が宿題だった生徒さん。
見事に調号を落として弾いてきました。
ト長調なのでファの音にシャープが付くのですが、全て抜け落ちています。


私には間抜けな音楽に聞こえるのですが、平気に弾いている生徒さん。
「変やなーとか思わなかった?」と聞きますが、違和感を感じているようでもありませんでした。

音楽において、違和感を感じる力は必要です。
メロディの音や和音の響き。
楽譜を読み間違えた時や、鍵盤を押し間違えた時に、何か変じゃない?と感じるかどうかです。

調号が抜けていても違和感を感じないのは、音階や和声の感覚が入っていないということだと思います。
実際この生徒さんは、音階とカデンツが苦手そうです。
頑張って練習してきてくれてはいますが、なかなかすらすらと弾けません。

日常で触れるような音楽は、基本的に長音階と短音階の2つを使って作られています。
ですので、レッスンでは音階とカデンツを必ず宿題にしています。


だいたいの教本は、ハ長調から始まり、調号がだんだん増えていきます。
音階はどの音からスタートしても音程の感覚が同じように音が並びますので、高さは違っても基本的に同じ響きがします。
その音の並びの感覚がきちんと身についている生徒さんは、いくつ調号が増えても難なく弾くことができます。
そうでない生徒さんは、この音とこの音が黒い鍵盤で…と考えて弾かなければならないようです。

ありがたいことに私はその感覚を自然に身につけられていたようで、音階やカデンツを弾くことに苦労したことがありません。
曲においても、調号が多いから弾きにくいとかそういう感覚はありませんし、移調するのも苦ではありません。
ですから、申し訳ないことに音階がサラッと弾けない生徒さんがどこで苦労しているのか共感するのが難しく、良いアドバイスができません。

苦手な人は、たくさん弾いて、頭と手と耳で覚えるしかないと思います。
そうして覚えていくうちに、響きを身につけていくのだと思います。

最近、何となく古典和声の流れに則っていない奇抜な音楽が多い気がします。
流行りの曲もそうですし、こども園や学校で歌っている曲もやたらとお洒落で高度になっているようです。
子どもの生徒さんに、私が幼稚園の頃に歌ったりしていた歌や童謡を「この曲知ってる?」と聞いても、知らないと返ってくることも多いです。
昔は日常の音楽から得られた単純なメロディの流れや基本的な和音の進行が、今ではいつの間にかでは得られないのかもしれません。

そもそも、それを抜きにしても、今回のバイエルの調号については、楽譜をきちんと読んで弾いていれば防げたことですが…

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