2025年2月5日

ママン、芸術とは…

六本木ヒルズ。


長い足の下をくぐりながら、なんだこの蜘蛛は…とずっと思っていました。


チラシに六本木ヒルズの蜘蛛。
お腹の卵を守るお母さん蜘蛛『ママン』という作品で、ルイーズ・ブルジョワの作品だということを知りました。
蜘蛛の他にはどんな作品があるのでしょう。
興味が湧いてきてしまいました。


『ルイーズ・ブルジョワ展 地獄から帰ってきたところ言っとくけど、素晴らしかったわ』

興味を押さえきれず、東京へ観に行きました。
大きな作品や演出のある作品がたくさんあり、輸送するのも展示するのも本当に大変そうです。
一つ一つの作品が強烈なエネルギーを持っていました。


ブルジョワにとって、作品は自分の考えや気持ちを表す手段で、その過程もとても意味深いもののようです。
彼女は「Art is a guaranty of sanity.(芸術は正気を保証する。)」と言っています。

「芸術」という言葉をどう捉えるかで違ってるとは思いますが、芸術という言葉よりは「表現」の方がしっくりくるような気がします。
「美」を求めたものではないので、美しい物を見ているという感覚は私には起こりませんでした。
「作品」と呼ばれるもの全てがイコール芸術になるとは限らないのかもしれません。

制作の動機は、家族とのこと、裏切りへの不安、自分への向き合い方…
彼女にとって女性ということは強く意味を持ちます。
私も女性としてその特有の臓器や器官が体の中にあり、作品に使われる度にチクチクと痛みます。
見れば見るほどブルジョワと同じ感情へ引きずり下ろされる感覚があります。
身体の中と思考でいろんなことがからまり、自分自身がどんどん脆くなっていきます。


作品は強烈なエネルギーを持っていて、彼女の戸惑いや寂しさや怒りが存分に伝わってきました。

自分は不幸なのだ!
自分の精神は不安定なのだ!
でもそれを頑張って跳ね飛ばそうとしているのだ!

そんなことを延々と聞かされ続けると次第に嫌にもなってきます。
文句ばかり聞かされてうんざり。
最後の方は作品に胸やけがしてくると同時に、こちらにも怒りが湧いてきます。

見る方もそれくらいのエネルギーをぶつけないといけない、迂闊に見られない展覧会ということです。
とにかく気持ちの良い展覧会ではなかったですが、感情を揺さぶられたということは、彼女の表現の仕方は素晴らしいということでしょう。

午前中に上野のモネ展に行ったのですが、先にモネを見ておいて良かったと思いながら、モネのような純粋な芸術を見てお口直しをしたいとも思い…

ブルジョワにとって作品制作が生きていくエネルギーだとしたら、私にとっては何だろうか…
そう考えると、私のエネルギーになるのは、残念ながらピアノを弾くことではなく、こうやって自分自身を文章にすることのような気がします。


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