2018年3月8日

顔でピアノを弾く

面白いピアニストさんを見つけました。
プログラムは、 ベートーヴェンのピアノソナタを2曲。
サロンコンサートなので、奏者とお客さんの距離が近く、息づかいまで聞こえてきます。


このピアニストさん、顔の表情が非常に豊かです。
困った顔をしたり、うっとりしたり、首を横に振りながら…
手はふわっとあげたり、シュッと引いたり。
自分に酔っているのか、とても気持ちよさそうに演奏されていて、見ているこちらが恥ずかしくなるほどです。

ちょうど「田園」を気に入って弾いていたので、このピアニストさんがどう弾かれるのか楽しみにしていました。
聴けば聴くほど、理解しようとすればするほど、生まれてくる違和感。
揺れるテンポ、ベートーヴェンなのにロマン派の弾き方、それだけではないようです。

何が変?
目を閉じて、純粋に音だけを聴いてみました。

つい今まで表情豊かだと思っていたのに、全く音に表情がありません。
強弱も付いているような付いていないようなで、拍感もフレーズ感も独特です。
この曲をどう理解して演奏しようとしているのか、よくわかりません。
何も伝わらない。

こう弾きたいという身体の動きが音楽とリンクして、曲にも表情がついているように聞こえていたようです。

それも一つの音楽の表現、演奏方法と言われれば、そうかもしれません。
でも、それは音楽というよりパフォーマンスのような気もします。

私が目指すベートーヴェンの音楽とは全く違いました。
あまりに音楽の取り方や曲の雰囲気が違うので、知らない曲に思えて、次のフレーズを思い出せないほどでした。

かなり暗譜が曖昧だったので、もしかして雰囲気で乗り切ろうとしたのでしょうか。
それなら楽譜を見たら良いのに…

身体を動かして弾くと重心が定まらず音がブレるので、私は基本的に動きません。
目指す音を出すための身体の動きなら必要なことですが、音にならないなら無意味なことです。

でも、顔を使った演奏方法、ちょっとだけ真似したい…
私はこのピアニストさんとは逆に、無駄なことはしない!と思い過ぎて、意識的にガチガチの無表情で弾いて失敗することがよくあります。
これを見習って、もうちょっと顔を使って弾こう…

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