音楽記号の中にも「・」は出てきます。
スタッカート(音を短く切る)の記号も「・」ですが、今回は、音符の符頭の右横についた「・」の話。
この点が付くと、付点音符と言われ、点がない状態の音符の1.5倍の長さになります。
久しぶりにコールユーブンゲンを開きました。
日本では、ワイン色の楽譜で大正14年に初版が発行されています。
恐らく全ての音大生が出会う楽譜です。
音程を取るだけでなく、拍子感、リズム感、フレーズ感を学ぶための教材。
1875年に、ミュンヘンで初版が発行されています。
歌う教材なので、もちろん単旋律なのですが、和声感がなければ正しく歌えません。
簡単そうに見えて奥が深いコールユーブンゲン。
きっちり勉強すれば、得るものはとても多いです。
高校生の時、ソルフェージュの授業があり、コールユーブンゲンを勉強しました。
音程についての注意、ブレスについて、拍について、書き込みがたくさんしてあります。
思い返すと、多くのことを学び、一番好きな授業でした。
順番に読んでいき、No.20、b)で出てきた、小節頭の「・」の表記。
何これ…
すっかり忘れています。
すぐ下に「音符自らが前の小節にあり、その付点が後の小節にある付点音符」と、解説書きがありました。
現代ならば、次の小節に相応の音符を書き、前の小節の音符とタイで結びます。
当時の正式な書き方なのか、それとも省略された書き方なのでしょうか。
今ならすぐにコピーができますが、そうはいかない時代、少しでも書く分量が少ない方が良いのは当然のことです。
L.モーツァルトの『ヴァイオリン奏法』を読んでいたら、また「・」についての説明がありました。
ちなみに、レオポルト・モーツァルトは、アマデウス・モーツァルトの父で、ヴァイオリン奏者、教育者。
『ヴァイオリン奏法』は、1756年に発行されています。
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音符の脇につけられた点は、手前の音符の長さを半分長くすることを意味する。
つまり、点の前の音符は通常の長さより半分長く保たれる。
訳注:点、付点、付点音符の理解は現代とは少し異なるので注意が必要である。
現代では符頭の横に点をつけて、点が付けられた音符の音価が1.5倍されると理解される。
これに対してこの時代は、点のある所で直前の音価の半分を追加すると理解され、その結果点は符頭のよこに置かれることがない。
(第1章 第3節 §8.)
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点があれば、視覚的に拍の頭を確認することができます。
付点音符が使われている時のリズムを説明するのに、わざわざ付点音符を分解してタイを使って説明することがあるのですから、とてもわかりやすい書き方です。
音にしてしまえば、どれも同じかもしれません。
ですが、その中身はちょっとずつ違う。
楽譜の書き方も音符に対しての考え方も、時代によって変わっていくものです。