2019年5月5日

旅から生まれた音楽

『ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2019』へ行ってきました。
『ラ・フォル・ジュルネ』は、毎年ゴールデンウィークに東京国際フォーラムで開催される、クラシック音楽のイベントです。
今年のテーマは『ボヤージュ 旅から生まれた音楽(ものがたり)』。


チケットを買った公演は4つ。
まず『"グランド・ツアー:ヨーロッパを巡る旅" 』を聴きました。


18世紀にイギリス貴族の若者たちの間で流行した、ヨーロッパ各地を旅して見分を広めようとするツアーを模したものです。
イギリスを出発して、フランス、イタリア、ドイツへと至るプログラム。
アーティスティック・ディレクターのオリヴィエ・フォルタンの構成は素晴らしかったです。
連曲の中の一部分や小品曲を寄せ集めたプログラムはあまり好きではないのですが、これは曲と曲の間に俳優の別所哲也さんの朗読が入り、全てが物語のように繋がり、とても面白いプログラムでした。
古楽器奏者6人で結成されたアンサンブル・マスクの演奏は、息をするように自然で透明な美しい音楽。
とっても素敵でした。

その後、『ザ・チェンバーブラス 〜N響金管奏者たち〜(金管五重奏)』を聴きました。


最初の2曲は初めて聴く曲でしたが、どちらも好みな曲ではありませんでした。
ガーシュウインの『パリのアメリカ人』は好きな曲なので楽しみにしていたのですが、この編曲も好みでなく…
そして、先に素晴らしい古楽器アンサンブルを聴いたのもあり、アンサンブル感の少ない演奏だったのが残念でした。
ただ、さすがN響の奏者さん、とても綺麗な音色で技巧的なパッセージも難なく吹かれます。
金管楽器がキラキラ、久しぶりの吹奏楽感、楽しい演奏でした。


2日目。
『北アフリカを巡る音のアルバム』のテーマで、無類の旅行好きだったというサン=サーンスの曲目です。


まず、アレクサンドル・スラドコフスキー指揮、タタルスタン国立交響楽団の演奏で、『アルジェリア組曲 op.60』。
その後、アブデル・ラーマン・エル=バシャさんが加わり、サン=サーンス『ピアノ協奏曲 第5番 ヘ長調 op.103 "エジプト風"』。
美しく構築された演奏。
超絶技巧は見せつけるためにあるのではなく、音楽の表現の為にその必要があるのだと感じました。
ホールAは広過ぎて音楽向きではないのですが、さすがエル=バシャさん。
ホールの大きさに立ち向かうことなく、とても自然な演奏でした。

夕方のエル=バシャさんのソロは、ショパン。
コンチェルトの後にサイン会をされていたので、ソロの頃には少しお疲れだったでしょうか…


美しい音色、絶妙なバランス、縦の響きがとても心地良く、中身が詰まった計算し尽くされた素晴らしい音楽です。
良く聞かせよう、こんな演奏どう?というような外向きな演奏ではなく、ひたすら自己の内側へ向けて黙々と演奏している感じが、とても好みの演奏です。

帰りの新幹線の関係で、エル=バシャさんのマスタークラスを聴講できなかったのが残念…

【まごいち音楽教室】
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