2019年12月11日

ハンマーが生まれ変わった

調律に来ていただきました。
ピッチも狂っていたのですが、音色とタッチの不揃い、鍵盤の反応の悪さなど、気になる所はたくさん…


あっという間に調律をしてくださり、その後、時間をかけて調整と整音をしてくださいました。

弦溝が出来て硬くなっていたハンマーを削ってくださいました。
本来、ハンマーの真ん中で弦を打たなければならないのですが、弦溝がハンマーの端ギリギリにある所もありました。
それも、ハンマーを削ることで一度リセットできます。


溝がほぼなくなるところまで削ります。
通常は工房でする作業だそうです。
私は削ったハンマーの屑を掃除機で吸い取るお手伝い。
ちょっと助手気分!


高音域はいくつかまとめて紙やすりで。
中音域から下の、ハンマーに対して弦が斜めに当たるところは、1つずつ削っていきます。
磨くと真っ白なピカピカのハンマーになりました。


削り過ぎてハンマーの大きさが明らかに変わってしまうと、重さのバランスが崩れてしまうそうです。

針を刺して、固まったハンマーをほぐします。


ピアノに使われているネジは、変わったネジです。
プラスドライバー、マイナスドライバーのどちらでも使えるようになっています。
この形のドライバーもあるのか聞くと、ドライバーをこの形にすると向きを合わせなければいけないから使いづらいと言われて、なるほど。


次は鍵盤の調整。
鍵盤の横揺れが酷かったようです。
鍵盤の下にピンがあり、そこと接触するフェルトが摩耗していたようです。
本来は張り替えるそうですが、今回は針で突っついてフェルトの厚みを回復させて調整。


少し化学の力を借りて、シリコンスプレーを噴きかけます。
滑りが良くなるそうです。


周りには新聞を敷いておきましたが、シリコンスプレーの粒子が飛んで、床がツルツルになりました。
滑る床でシリコンスプレーの力を実感。
これで、縦の動きは滑らかに、横には揺れないように。

ハンマーがバウンドする現象。
極々ゆっくり弱く打鍵すると、ハンマーがバウンドして弦を2度打ってしまい、2つ音が鳴ってしまいます。

以前、別の調律師さんに相談したら、これは弾き方の問題で、仕方ないことだと言われてしまいました…
ですが、他の鍵盤や他のピアノで同じ弾き方をしても起こらないし、弾き方のせいにされるのはどうも納得いきません。
どうしたものかと悩んでいて、今回相談してみました。

スプリングが強かったそうで、調節してくださったら、2度音が鳴ることはなくなりました。


ですが、弾くとやっぱり指に「ブルルン」という感覚が。
覗くと、音は鳴らないものの、ハンマーが何度もバウンドしているのが見えます。

いろいろ考えてくださいました。
こんなところ(ハンマーバット板)に細い沢山の溝。


研磨しなかった切りっぱなしの状態なのかと思ったら、そうではなく、ここに溝があるのにはちゃんと理由があって、鹿皮(打鍵後に落ちてきたハンマーを受け止める時に接触する場所)との摩擦で動きを鈍くしているそうです。
長年使っているため、溝がなくなってしまっていました。
ヤスリで溝を作ってくださいました。

時間をかけて細かい所まで調整してくださり、音色もタッチも揃いました。


当たり前のことですが、同じ弾き方をすれば、どの鍵盤からも同じ音が出ます。
今までは、鍵盤によってタッチも音の出方も違うので、このピアノで極上のレガートを作るには鍵盤によってタッチを変えなければいけませんでした。
ピアノが変わればその具合も変わるので、本来は不必要な練習です。
そして、練習すればするほど変な癖が付くだけです。
良いピアノで練習しなければいけないのは、こういうことがあるからです。

鍵盤の下にある「パンチング」というドーナツ型の紙をいただきました。


鍵盤の高さや深さを調節するための紙で、色によって厚みが違います。
普段見えない所にありますが、ちゃんとピアノの一部です。

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