ピアノを弾く者として、指をどれだけ大事にしてきたか…
指は大切。
でも、指は無意識の領域でした。
怪我さえしなければok!動けば、使えればok!と、日常生活で指を特別に気遣っているわけでもありません。
冬になって寒くても、手袋なんて面倒だと履かないこともあり、ふと自分の指や手を見ると、乾燥してカサカサ皺々…
流石に可哀想で、ハンドクリームを塗るけれど、それも別に特別な物でもなく。
ですから、夏なんかは更に放ったらかし。
自分にとって、指がどんな存在か、何をするためのものかと考えてみると、触ったり、掴んだり、道具を使ったり…
そして、やっぱりピアノを弾く指です。
さて、最近、不思議な指を見ました。
佐川美術館、樂吉左衞門館で、『吉左衛門X 齋藤隆×十五代吉左衞門・樂直入』という漢字だらけの難しそうな展示が行われていました。
特別な興味もなく、順路に従って館内の進路に沿って、入っていきました。
展示室前のホール。
ここにピアノを置いて演奏したいな…
歩くと足に伝わってくる木の感触と優しい足音。
音には敏感です。
展示室は暗闇の空間。
そこに樂吉左衞門の茶碗が展示されているのは知っていましたが、今回、とんでもない作品が一緒に展示されていました。
齋藤隆さんの作品。
黒一色で描かれた顔や指。
奇怪。
これが、私の精神を崩壊させてくるのです。
指の作品を見て、うわっ…、げっ…
その制作過程のメモのような物を見て、さらに奥を抉られます。
これは、病む…
ぐるぐる線で描かれた顔は、中に人がいるみたいにこちらを見ていて、なんだか怖い。
指はニョロニョロと動き出しそう。
この人の絵は、生きています。
ダメだ!
精神を持って行かれる。
長いこと見ていたら危険だ!
気になって気になって、見たくて仕方ないけど 、これ以上は見ていられない…
こんな作品は初めてです。
帰って来てから思うのです。
もう一回行って、もっと良く見たい…
あ…
もしかして…
取り憑かれてる?