1933~1934年に作曲されたこの作品は、新しいのにどこか古典的、神秘的な響きで不思議な曲です。
大学時代、前衛的な音楽をいくつも聞いてうんざりしていた時に、面白さを理解できた数少ない曲の1つです。
この「マティス」、フランスの画家アンリ・マティスのことだと思い込んでいたのですが、実は違うということに、今になってやっと気が付きました。
ヒンデミットとアンリ・マティス、確かに時代的にはぴったり同じなのですが、アンリ・マティスの絵は、どうも曲の雰囲気とは違います。
ゴッホやゴーギャンの影響を受けたアンリ・マティスの作品は、自由で大胆な色彩が特徴です。
以前、美術展でアンリ・マティスの作品を見た時、交響曲『画家マティス』の神秘的なイメージとはちょっと違うなー、ヒンデミットと私は感覚が合わないのかな?好きな曲なのにちょっと残念…と思っていました。
その時に調べれば良かったのですが…
実は、感覚の違いではなく、ただの私の勘違い。
ヒンデミットが作品のタイトルにした「マティス」という画家は、16世紀のドイツの画家マティアス・グリューネヴァルトとして知られる、マティス・ゴートハルト・ナイトハルトです。
交響曲『画家マティス』は、マティアス・グリューネヴァルトの代表作『イーゼンハイム祭壇画』を題材としています。
『イーゼンハイム祭壇画』はドイツ絵画において重要な作品の1つで、聖アントニウスが祀られている祭壇の扉に描かれ、「受胎告知」や「キリスト磔刑」、「キリストの復活」などで構成されています。
4月4日から、あべのハルカス美術館で『マティスとルオー -友情50年の物語-』という展覧会が行われていることを知りました(こちらの「マティス」は、アンリ・マティス)。
マティスってあの『画家マティス』のマティス? 見に行こうかなー、と思いながら、久しぶりに聴いてみようとヒンデミットのCDを取り出して、やっと、この「マティス」がアンリ・マティスではないことに気が付いたのです。
美術館へ行くのは好きなのですが、美術について詳しくない私は、「マティス」という名前の画家が何人も存在するなんて思いもしなかったのです。
約10年間、長い勘違いでした…
この記事を書くのに、交響曲『画家マティス』のこと、2人の画家の「マティス」のこと、調べてみたら、結構同じ勘違いをしていた人も多いようで…
私だけじゃないわ… と、ちょっとホッとしたりもしています。