昔は、その美しい旋律に惚れぼれして大好きでしたが、ショパンの素晴らしさは、勉強すればするほど、どんどんわかってきます。
和声進行、揺れるようで揺れないルバート、フレーズや強弱の使い方、時々バッハが垣間見え、そして美しい曲の雰囲気…
ショパンが作った曲に「マズルカ」というものがあります。
ショパンは、日記を書くように、生涯をかけてマズルカを作り続けました。
そのマズルカ、全曲練習しました。
途中お休みしたので何年かかかりましたが、最初から順番に飛ばさずに。
ショパンと言えば、作品10と作品25の練習曲は絶対に避けて通れず、ワルツやノクターン、ソナタ、スケルツォ、バラード、前奏曲、ポロネーズ、コンチェルト… たくさん練習する曲がありますので、私の中では、マズルカは大した位置にはありませんでした。
ある日レッスンへ行くと、先生が「マズルカどう?」とおっしゃいました。
「最初から順番に全部。面白そうね。」と。
その時、特に弾きたかったわけではありませんでしたが、「はい」と言って始まったマズルカ全曲。
これが、意外と難しい…
1曲は長くなく、譜読みもテクニックも、めちゃくちゃ難しいわけではないのに、とにかく弾きにくい!
音がはまらないし、エネルギーは不安定だし、一番大変なのは真面目に弾いたのでは絶対に表現できない空気感。
マズルカというのは、ポーランドの民族舞踊です。
特徴のあるリズムや三連符、強迫の位置、変わった音階…
日本に引きこもって、日本語しか理解できない者が、行ったこともない場所の舞踊の音楽を弾こうとしているのです。
そりゃわからん。
最初はぎこちないマズルカでしたが、何曲か進んでマズルカの曲調がスッと入ってきた時には、ショパンのことが少しわかったようで嬉しい瞬間でした。
そして、バラードやソナタの中にも、ふとマズルカを感じる瞬間(ショパンの精神を感じる瞬間だと思っています)があることに気付きました。
何曲もマズルカを弾き続けて、ショパン像がちょっとずつ変わり始めました。
そして、終盤に差し掛かった時、ふと浮かんだ疑問。
ポーランドって寒いの?
雪はないけれど、茶色い土に枯れた草木、とても冷たい空気…
マズルカを弾いていると、どの曲からも寂しい風景が見えます。
明るく楽しい曲もありますが、やっぱり季節は、冬。
マズルカだけでなく、ショパンの曲には、美しさと共に冷たくて寂しい空気を感じるようになりました。
いつか、ポーランドに行ってみたいなー。