2018年9月26日

湿気の行き先

調律師さんとお話をしていると、勉強になることがたくさんあります。

カワイのピアノは、アクションの部品の一部にプラスチックが使われています。


これは、一長一短だそうです。
音色に関係ない部分ですし、均一に作れるため個体差がなく安定しているそう。

ただ、木の部分が減ることになり、本来、木が吸うはずの湿気をフェルトが吸ってしまうため、ハンマーやフェルトの部品の劣化が非常に早いそうです。
湿度が高い所ではプラスチック素材の方が良いのかと思っていましたが、そうではないようです。
逆に、湿度管理がきちんとされている所では問題ないということです。

プラスチック部品は劣化するイメージなので、何年かしたら折れたりしないのか心配していたのですが、それは聞いたことがないそうです。
プラスチックの劣化よりもフェルトの劣化の方が早いということですかね…

それから、最近のピアノは、昔は工場で行っていたいくつかの作業をせずに出荷しているそうです。
細かいところは、購入した後に調律師さん任せ。

困るのは、工場からの出荷時に鍵盤の下の紙(パンチング)が少ししか入っていないことだそうです。
鍵盤の下には、鍵盤の上面の高さを揃えるために薄い紙が何枚か入っています。
高く上がっている鍵盤があった時、紙がたくさん入っていれば何枚か抜けば良いのですが、もともと少ないと抜く紙がない!という事態になってしまいます。
そういう時は、鍵盤の下側を削らなければいけないそうです。
調律師さんって大変ですね…


ある調律師さんは、柔らかい音が好みだとおっしゃっていました。
また違う調律師さんは、夜の湖をイメージして音を作るとおっしゃっていました。
調律師さんが、ご自身の理想のタッチや音色を持っていらっしゃるのは、とても素晴らしいことだと思います。


ピアノ弾きは、要望は言えますが、ここの部品をこうして欲しいと具体的にお願いすることができません。
ですから、こちらの意図を汲み取って手を入れていただきたいのです。
はっきりした音色にして欲しいという相談に、ハンマーの先端の脇を削る方もいらっしゃれば、ドライヤーで温風を当てて水分を抜く方もいらっしゃいます。
結果が同じになるとしても、方法はいろいろあるのでしょう。

昔、発表会のホールの調律をお願いした方。
ペダルが少し気になったのですが、何をどうしてもらったら良いかわかりませんでした。
調律師さんに「あの~、ダンパーペダルが…、何て言うか…、もうちょっとこう…」と言うと、調律師さんはペダルを踏んで「ああ…」と言いながら、調整してくださいました。


その後、ペダルを踏むと、モヤモヤは改善。
きちんと伝えられなかったのに、解決してくださいました。
ペダルを踏んでみて、こちらが感じた違和感を同じように感じてくださったのだと思います。
ピアノ弾きと調律師さんの目指す方向が同じということは重要なことです。

毎日弾いていても、ピアノのことを全然わかっていないピアノ弾き。
少しの不具合も直せません。
出来ることは、温度と湿度の管理ですが、湿度が高いピアノの部屋はそれが非常に大変なのです…

【まごいち音楽教室】
TEL:080-3130-7057
メール:mago1.klavier@gmail.com