『マタイ受難曲』と言えば、1829年のメンデルスゾーンによる上演。
この上演は、没後忘れられていたJ.S.バッハの再評価に繋がりました。
音楽史の中でも大きな出来事。
大学の時に何度か図書館でCDを聞きましたが、最後まで聴けたことはなく…
きちんと聴くにはコンサートへ行くしかないと思いましたが、実際行ってみようと思うと、3時間の宗教曲はやっぱり重くて、なかなかチケットを買うには至りません。
昨年、お誘いをいただいて、岐阜バッハ合唱団の演奏会で『ヨハネ受難曲』を聴きました。
今年は何をされるのだろうと思っていたところ、ちょうどまた演奏会のお誘いをいただき、『マタイ受難曲』だと知って喜んで聴きに行ってきました。
少しくらいは勉強して行こうと思ってスコアを手にすると、やっぱり厚みが凄い。
3時間の大作です…
全部読むのは絶対に間に合わない!
開いてみると、久しぶりに見る数字付き低音譜。
オルガンのパートです。
通奏低音と呼ばれる、バロック時代まで鍵盤楽器に使われていた記譜法で、バスの音のみが五線に音符で記譜され、和音の構成音は数字で示されます。
音符の上に数字がなければ、バスの音を根音として第3音と第5音を重ねた三和音になります。
(バス音が「ド」なら、和音は「ドミソ」)
「6」と書かれていた場合はバス音の6度上の音を重ねた、三和音の第1転回形。
(バス音が「ド」なら、和音は「ドミラ」)
バスの音は決まっていますが、その他の和音構成音をどのオクターブに置くか、また伴奏の形は奏者に任されています。
他のパートそっちのけで、興味は通奏低音にしか行きませんでした。
大学生の時、チェンバロを触りたくて受けていた通奏低音の授業。
毎週25分間の個人レッスン。
数字を読むというよりは、伴奏付けと和声課題の要領で弾いていました。
数字は和音の答え合わせとして見ていたようなものです。
半年間のレッスン、本当に初歩のところまでしか出来ませんでしたので、それで何とかやっていけました。
たまに、旋律がハ音記号で書かれていたりするので、そうなると頭パンパン!
2段鍵盤のチェンバロで、先生が、ここは上の鍵盤で弾きましょう、ここは下の鍵盤で弾きましょう、なんて言われると、もうパニック。
ハ音記号の旋律を頭の中で再生しながら、両手で通奏低音、弾き慣れないチェンバロ…
『マタイ受難曲』の通奏低音を、3~4ページ目くらいまで読んでみました。
読めなくはないですが、なかなか時間がかかります。
低音の音符1つごとに和音が変わる場所もあり、数字だらけ!
オルガニストさんにとっては普通のことなのかもしれませんが、これを3時間の曲中ずっと読みながら弾かれていると思うと、他の楽器と比べてすごい負担なのではないか…と思ってしまいます。
こんなことを、ゆったりゆったりしていたので、演奏会までに間に合うわけもなく。
ほとんど知識のないまま、聴きました。
2組の管弦楽合奏と2組の混声四部合唱、福音史家と独唱。
とても規模の大きな作品です。
これから始まる物語の情景が思い描かれるような演奏で始まりました。
合唱団さん、熱心に練習されているのが伝わって来ます。
コラールの部分、大変厚みのある音色でした。
同じ旋律で調性や和声を変えて5回出てくるのですが、聴く度に心地よく新しい響きでした。
途中でリタイアすることなく、初めて最後まできちんと聴きました。
やっぱり、もっとしっかり勉強して行けば良かった…