「エラールピアノ ラストロビーコンサート Vol.2」イリーナ・メジューエワさんのピアノソロの演奏です。
ロビーにあるエラールのピアノが、3月末でホールを去ることになったそうです。
1927年、フランス製、90鍵(低音に鍵盤が2つ多い)のピアノです。
このロビーでのエラールの演奏は何度か聴いたことがありますが、弾く人によって鳴ったり鳴らなかったりするピアノです。
きちんと打鍵して弾けば音が飛んで行きますが、鍵盤をただ触っているだけでは全く音が出ません。
今回、かなり後ろの方に座りましたが、ピアノも良く鳴り、空間も響くので、音が降ってくるようです。
清々しくて、薄く滑らかな音楽。
エラールの柔らかな響きと、空間に広がる響きが心地よくて、響きの中にふんわりと浮いているような感覚でした。
どうせ、顔も手も見えない席、何ならピアノもほとんど見えない。
目を閉じて聴いていました。
メジューエワさんの演奏は、好みの演奏ではありません。
縦の線をずらして弾かれます。
ショパンのノクターンは、ショパンのルバートの弾き方。
左手が規則正しく、その上で右手が自由に歌いあげます。
ドビュッシーの「月の光」、冒頭の和音の連なりで音楽が進むところ、この部分も、メジューエワさんはずらして演奏されました。
右手が早くて左手が少し遅れて続きます。
縦の和音の響きよりも横のフレーズが優先です。
もしかしたら、何か考えがあって、ずらしているのではないでしょうか?
中間部は、伴奏の方が規則正しく、旋律が自由に歌う形でした。
終演後、ライブラリーにメジューエワさんの本があったので、手に取ってみました。
ちょうど、ドビュッシーの「月の光」のことについての記述があり、冒頭の部分、長いスラーは「ほんのわずかの揺れ、縦の線のちょっとしたずれも必要かもしれない」と書かれています。
音楽を表現するために、縦の線のずれを利用しているのです。
私は、縦の線をぴったりと保ったまま、揺れずに長いスラーをかけることで、その情景や雰囲気を作れるのだという考えなので、衝撃!
いろいろな考えや解釈がありますね。
帰りに本屋さんへ寄り、メジューエワさんの本を買ってきました。
きっと、私とは違う方向から音楽を作られているのでしょう。
読むのがとても楽しみです。