指揮はパスカル・ロフェさん、フルートは工藤重典さん。
ストラヴィンスキーの、バレエ音楽『プルチネッラ』組曲から始まりました。
この曲を聴くと、貴族の時代のヨーロッパの風景が浮かんできます。
「序曲」の出だしを聴くと、ヘンデル『水上の音楽』の「アラ・ホーンパイプ」と同じ空気を感じるのです。
素材や技法はバロック時代や古典派時代の音楽ですが、和声が完全にストラヴィンスキー。
古典的な演奏様式の中で、ちょっと変わった響きを味わいたい…
今回の公演の演奏は、何だか先を急ぐ演奏で流れてしまって、好みではありませんでした。
この公演のプログラムのテーマは「魅惑のフランス音楽」。
『プルチネッラ』ってロシア音楽じゃないの?と思ったのですが、初演は、1920年5月15日のパリ・オペラ座。
ストラヴィンスキーは1920年からパリに住み、その後、落ち着いて新古典主義音楽に取り組むことになります。
『プルチネッラ』は、新古典主義音楽の始まりとなった名曲です。
次は、工藤さんのソロで、イベール「フルート協奏曲」。
めまぐるしく動く音を追いかけていると、うっかり音楽であることを忘れてしまいそうな曲。
超絶技巧を何ともないように演奏され、何よりもその表現に引き込まれました。
複雑な音の羅列、動きも多いのに、なぜこんなに上品な音楽になるのでしょう…
アンコールの「パンの笛」。
完全に工藤さんの世界に連れて行かれました。
艶やかな音。
身体全体から音楽が聴こえてくるようです。
最後の長い1音が消える瞬間まで、息をする音も出せないくらいの緊張感でした。
後半の1曲目は、デュカスの交響詩「魔法使いの弟子」。
2017年にびわ湖ホールで聴いたウラル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏。
すごく繊細、向こう側が透き通って見えそうな演奏で、この印象が私の中で強く残っていて、なかなかそれに対抗する演奏には出会えません。
「魔法使いの弟子」は、ゲーテのバラードをモチーフにした曲で、ディズニー映画「ファンタジア」で使われています。
今回の演奏、割と現実的な音楽で、映像が見えてくるような演奏でした。
ドビュッシーの、交響詩「海」。
大規模編成なので、音のうねりに圧倒されます。
少しずつ色や明るさ、温度が変わっていくような音楽。
ドビュッシーの掴みどころのない感じ、ふんわり音楽の中に漂っているうちに、演奏会は終了。
アンコールは、マスネの歌劇『バザンのドン・セザール』より第三幕「セビリャーナ」。
指揮のパスカル・ロフェさんは、元フルート奏者らしく、フルートが大活躍する明るい曲で、清々しく終わったコンサートでした。