基礎がなければ、その曲が仕上がっても、次の曲はまたゼロから。
そして、少し時間が経つと、弾けていた曲が全く弾けないという事態になるのです。
例えば、基礎が「7」まで出来ていたとして、「8」の曲を弾こうと思ったら「1」頑張れば良い。
そして、曲を練習しながら、基礎を「8」にレベルアップさせます。
「4」や「5」の曲はすぐに弾けます。
基礎が「3」だったら、「8」の曲を弾くのに「5」も頑張らなければいけないのです。
この場合、曲を弾くのに必死で、基礎を底上げする余裕はありません。
基礎が変わらず「3」なのに、「8」の曲が弾けて上達したと思って曲のレベルを「9」に上げると、次は「6」頑張らなくてはいけなくなります。
「8」の曲を弾くのに頑張った「5」は、なかったことに…
基礎が「7」で「8」の曲を練習しているAさんと、基礎が「3」で「10」の曲を練習しているBさん。
この2人が、同じ「5」の曲を弾いた時、上手に弾けるのはAさん。
このレベルの曲が弾けるのか、この曲(だけ)が弾けるのか。
大きな違いです。
基礎がない演奏は、中身が詰まっていないので、すぐに壊れます。
無理やり仕上げた曲は、何日間か弾かなければ、すっかり忘れてしまうのです。
前に仕上げた曲が弾けないというのは、記憶力ということもあると思います。
でも、もし記憶力だけが問題ならば、少し練習すれば戻るはずです。
数時間練習しても思い出せないのなら、それは、表面上仕上げたつもりで中身が手に入っていなかったということです。
基礎のレベルと曲のレベルに差があり過ぎる場合、レッスンで確実に指導できることは、楽譜の読み違いを直すくらいです。
アドバイスをしても、理解してもらえないか、改善されないことがほとんどです。
そして、前の曲でレッスンした内容を、次の曲でもう一度言わなくてはいけないのです…
私は、高校1年生の時に先生が変わり、基礎を1からやり直しました。
姿勢から手や指の形、手の動かし方…
楽譜の読み方も全くわかっていませんでした。
ショパンのエチュードを弾いていたのに、ツェルニー50番からやり直し。
バッハの平均律クラヴィーア曲集を弾いていたのに、2声のインヴェンションからやり直し。
ハノンも1番から、スケールも全てやり直しました。
周りの友達が、難しいエチュードを弾いていたり、大曲を弾いていたりすると、とっても焦りました。
高校1年生の時、コンクールに出たくて、フランスの作曲家の曲を弾きたいと先生に相談したのですが、今はフランスの現代曲をする時期ではないと言われました。
バッハ、ベートーヴェンを中心にドイツもので基礎を固めました。
高校3年生になって、試験の課題曲でラヴェルを薦めてくださった時、基礎固めができたのかな?と思ったのを覚えています。
高校生の時に基礎をやり直していなかったら、今どうなっているのだろう…
ツェルニー50番の1曲目をたまに弾きます。
地盤固めをした大切な曲です。