2019年6月4日

屏風にブラームス

図書館で本を読んでいました。
すると、日本画でブラームス登場!
日本人が描くブラームス、とても興味があります。

どこで見られるの?と思って調べると、大垣市の美術館。
近い!
ただ、この作品は常設展示ではなく、いつでも見られるわけではなさそうなのです…
それが、企画展『新時代がはじまる』で、ちょうど展示中とのこと。


すぐにテンションが上がり、見に行ってきました。

大垣市守屋多々志美術館。
「ウィーンに六段の調(ブラームスと戸田伯爵極子夫人)」を見てきました。


11代大垣藩主であった戸田氏共(うじたか)伯爵は、1887年(明治20年)から1890年(明治23年)まで、オーストリア・ハンガリー兼スイス特命全権公使を務め、ウィーンに滞在していました。
その際に、夫人の極子(きわこ)が、ブラームスの前で筝を演奏した様子を描いた作品です。
極子は、山田流の筝の名手でした。

演奏した曲は、八橋検校の「六段の調べ」。

戸田家の音楽教師であったハインリッヒ・フォン・ボクレットは、「六段の調べ」の楽譜を作り(和声付けおよびピアノ曲に編曲)、1888年(明治21年)に出版しました。
タイトルは「Rokudan」。
楽譜は、ト音記号とヘ音記号の大譜表、4分の4拍子で書かれ、「Ruhig (静かに) gehend (歩く速さで、アンダンテ)」との指示がされています。

実際に演奏を聴いたブラームスは、ボクレットの楽譜に鉛筆で修正を書き込み、極子に献じました。
後に、戸田家からウィーン楽友協会に寄贈され、「ブラームスの遺産」として保管されていました。
1984年(昭和54年)に、オーストリアと日本でこの楽譜が調査されました。

もともと極子夫人を描く構想があった守屋多々志が、このエピソードを知り、この作品が描かれることになります。

とても美しい素敵な絵です。
屏風の近くに行くと、本当に筝の音色が聞こえてきそうです。

面白いと思ったのは、それが屏風であること。


屏風なので折れているのですが、折れていると、極子さんとブラームスはお互いが見えません。
そもそもブラームスは極子さんの方を見ていませんし、極子さんとブラームスとの空間が何となく違う印象を受けました。
本では、平面の状態で印刷されていますので、日本人がブラームスと同じ空間に居るなんて素敵と思っていましたが、ちょっと予想と違う雰囲気です。
ブラームスは眉間に皺を寄せていますし、とても張りつめた真剣な空気感を感じました。

2階の展示室には屏風の下図の展示もあり、守屋多々志自身のメモ書きが見られます。
『(一八四〇)以降 トーネット 椅子』とのメモ書き。
ドイツのボナパルトに生まれたミヒャエル・トーネットの椅子で、曲げ木椅子の量産、普及に成功した第一人者です。

極子が座っている椅子が、トーネットの曲げ木椅子です。
実際に屏風絵を見た時、極子のドレスと共に椅子にも目が行きました。
素敵な椅子です。


そして、『子守歌 一八六四 作曲 「五ツの歌曲」の一つ。』『おやすみ、やすらかに…』と歌詞が書かれています。
ブラームス作曲の『5つの歌曲 (Funf Lieder) 作品49』の第4曲、「ブラームスの子守歌」として有名な曲です。

他に、『一八八六 クリムト壁画 ウィーン・ブルク劇場』、『一八九二 ルノワール作 「ピアノの傍で」(ブラームス蔵)』など、当時の様子やブラームスについて細かく考証していたことがわかります。

爽やかな色遣いで優しく描かれた屏風。
ブラームスの前で演奏される筝、その空間の中に入り込んだような素敵な作品でした。

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