メンデルスゾーンの「厳格な変奏曲」を練習中です。
先生から「この曲は?」と言われて、実は少し気になっていたので飛びついて始めてしまいました。
楽譜にはいろんなことが書かれています。
書かれていることもあれば、書かれていないこともあります。
書かれていないことは想像するしかありませんが、指示があってもそれをどう解釈して表現するかは、その人の知識と経験、そしてやはり想像力で変わるものです。
自分の経験や記憶、想像の中にない情景や感情は表現することができません。
ですから、たくさん勉強するだけでなく、たくさん経験して、たくさん感じなければいけません。
メンデルスゾーンが1841年に作曲した「厳格な変奏曲」は、16小節のテーマと17の変奏曲、コーダから成ります。
涙が出るほど美しいVer.14。
そのバリエーションの1小節目の2拍目。
この響きを上手く表現できず、悩んでいました。
場違いな音色は先生にも見抜かれ「ここは、祈るような音でしょ?」と言われました。
なるほどー!と、それから、凄く凄く考えて何度も弾いてみるのですが、やっぱり私の音色はどうもしっくりせず。
それから数日後、あることに気が付きました。
私は「祈る」ということをしたことがないのです。
「祈る」ということは、つまり「神に祈る」ということなのでしょう。
常日頃、私は神様の存在に頼って生きているわけではありません。
何かを信仰しているかと聞かれれば何も無く、家には一応お仏壇があるので仏教徒ということになるのでしょうが、お経も読めないどころか、毎日手を合わせることすらしていません。
しかも、ここの祈りの音は、お願い!何とかして!というピンチな状況ではなく、どちらかというと、この幸せが続きますように…の祈りのような感じがします。
「家族みんながいつまでも幸せですように」「楽しくピアノを弾き続けられますように」ということは常々思っていますが、そういう現実的なものではないようです。
私にはまだわからない…
ですが、わからないからと言って放置することもできません。
想像したり考えたりするしかなく、何とかそこにふさわしそうな音を出せるようにはなってきました。
今後、もし私の中に「祈る」という感情が芽生えた時に、この音は、また変わってくるのでしょう。
その時が来るのが楽しみです。