先週のレッスンで、バイエルの中の1曲を聞かせてもらいました。
音の間違いはないですし、楽譜通りに弾けていると言えばそうなのですが、もの凄く淡々と弾くので、ただの音の羅列になってしまっています。
練習曲なので、曲の中に情景や感情などを見つけることは難しいかもしれませんが、音の響きの変化は必ずあります。
そこで、この曲にタイトルを付けてくるという宿題を出しました。
今週、楽譜の上の余白に書いてきてくれたタイトルは「ハッピー」。
私には何だか不思議に思えるタイトルでした。
奇抜な言葉ではありませんが、曲のタイトルとしては珍しい言葉です。
演奏は、少し明るくて、それこそハッピーな雰囲気の曲になっていました。
曲のことを考えてみたらハッピーな感じだったからタイトルを「ハッピー」にしたのか、タイトルを何にしようか考えて「ハッピー」にしたからハッピーらしく演奏したのか。
どちらなのか、生徒さんに聞いていないのでわかりませんが、とても良い演奏になりました。
タイトルを付けただけで、何もアドバイスをしていないのに魅力的な演奏に変わるのは面白いです。
バッハのフーガのような曲もありますから、何でもかんでもタイトルを意識して、感情たっぷり、情景豊かに弾けば良いというわけではありません。
でもどの曲にもその曲の特徴や雰囲気は存在するはずだと思うのです。
ちなみにフェルディナント・バイエル(1806-1863)は、ドイツの作曲家でピアニストです。
日本で古くから使われている『バイエルピアノ教本』(Vorschule im Klavierspiel op. 101)は、1850年頃に初版が発行されたと言われています。
音楽史では、ロマン派の音楽が全盛期を迎え、ロマン派後期が始まる頃です。
特にひねりのない曲が多く「練習曲」という感じの練習曲ですが、もっと自由に表現して弾いても良いのではないかと思っています…
バイエルは時代遅れなんておっしゃる先生もいらっしゃるようですが、スタンダードな和声進行を学んだり、メロディと伴奏のことを学んだりするには、バイエルはとても良い教材だと思っています。
たくさんあるので全曲は使いませんが、生徒さんに必要な曲をレッスンに取り入れています。