高校生の時、ピアノの実技試験でショパンの『エチュード 作品10-5 <黒鍵>』が課題曲として出されました。
家で練習するピアノはヤマハ。
試験当日のピアノはスタインウェイ。
小さな頃からずっと感じていることですが、スタインウェイの黒鍵はヤマハよりも細い!
その頃、レッスンで演奏方法を直していただいていたので、自分の中で身体も手の使い方も定まっておらず、何を弾いても違和感があり、元々多かったミスタッチは更に増えていました。
ヤマハの感覚で弾いたら、指が黒鍵から落ちる…
スタインウェイで練習したい…
どこかスタインウェイを弾ける場所がないか探し、試験前に近所のホールのスタインウェイを借りて4時間くらい練習しました。
その時、ピアノ庫で1冊の大学ノートを見つけました。
開いて見ると、ピアノを弾いた人の感想が書かれていました。
今日はどこの鍵盤の音の調子が悪いだとか、どこから雑音がするだとか…
ピアノは、全ての制作工程を終えた新品が最高の状態というわけではありません。
弾き込んで部品を馴染ませながら、良いピアノに成長させるのです。
恐らく、そのノートは、新しくやって来たピアノを弾き慣らすお仕事の人が書いていた連絡ノートだったのだと思います。
仕事?ボランティア?
どちらにしても、スタインウェイのピアノが弾けるなんて!
羨ましい!
私もしたい!
そう思っていました。
先日、お世話になっている方からお電話をいただきました。
ホールのスタインウェイをオーバーホールされたとのことで、少しだけですが、弾き慣らしのお手伝いさせていただけることになりました。
そんな機会がやって来るなんて、夢のようです。
全ての鍵盤を均等に使うために、全調のスケールや半音階を弾きます。
その後、練習中の曲も少し弾かせていただきました。
ハンマーは柔らかく、バランスも今一つですが、弾き始めてから2時間経つ頃、ようやくそれなりの演奏ができるような気がしてきました。
以前、ヤマハの技術さんが、ピアノはその環境に2時間遅れで順応するとおっしゃっていました。
今回のピアノはスタインウェイですので、ヤマハとは違うかもしれませんが、やはり続けて何時間か弾き続けると、いろんなパーツが馴染んでくるのでしょう。
もしくは、2時間で、私の耳と手がピアノに馴染んだのか…
短期間で大きく変わるものではありませんが、少しはお役に立ったでしょうか。
ピアノ庫のノートは、まだ庫内に置かれています。
拝見すると、平成13年2月から書かれていました。
ピアノの調子のことも書かれていましたが、「今度、連弾しませんか?」なども書かれていて、交換日記のようで何だか良いなーと思いました。
時代が変わり、今回の弾き慣らしの伝達事項はメールです。
高校生の頃の夢というほどでもない小さな夢。
ずっとピアノを続けていたら、叶いました!