シベリウスの「樅の木」。
5曲から成る『5つの小品』作品75、『樹の組曲』と言われる組曲の最終曲です。
私が初めて弾いたのは、小学6年生の時。
ピティナの課題曲か何かでした。
当時、全く曲のことが理解できず、頭の中に「?」をたくさん出しながら演奏していました。
物憂いと言うか、すっきりしないその表情は、子どもの私にはわからなかったのです。
理解できなかった気持ち悪さが強過ぎて、音は頭と手の中に強烈に残り、弾いてと言われたらいつでも弾けるような状態。
ただ、音がわかる、正しい鍵盤を押さえられる、というだけで、やっぱり弾くと「?」だらけになるのです。
さて、大人にもなったし、そろそろ、この「樅の木」を、何とか形にしたい。
今から同じような練習をしても、何も変わる気がしません。
シベリウスのことを良く知るには、まずはとにかくたくさん曲を弾いてみることです。
もともとは組曲の中の1曲。
まずは、第1曲「ピヒラヤの花咲くとき」です。
『樹の組曲』なのに、何で花?
もしかして違う組曲の中の1曲?
そう思いましたが、作品番号はちゃんと『樹の組曲』の中の第1曲になっています。
弾けば確かに、最初は花っぽい感じがするのですが、後半は、花っぽくはなく、完全に木です。
そこで、やっと気が付きます。
木にも花は咲くわ!
「ピヒラヤ」という聞いたことがない名前の木は、一体どんな木なのでしょうか。
それが、軽くインターネットで調べても出てきません。
ようやく出てきた情報は、いわゆる「ナナカマド」という樹だということ。
最初のフレーズで、上手に弾けると、風がスゥーッと吹く感じがします。
この風がどこから来るのか、まだわからないので、上手く弾き始められるかどうかは、まだ半々くらい。
でも、上手くいくと、やっぱり澄んだ冷たい風が吹くのです。
これが北欧フィンランドの空気かな…
第2曲の「孤独な松の木」。
曲の出だし、音自体は軽いのに「Grave(重々しく)」の表記。
寒さの厳しいフィンランドっぽいなと感じるところです。
根を張って耐える木々。
最後の8小節は特に、シベリウスが書くフィンランドの雰囲気の響きがして、私のお気に入りです。
第3曲の「はこやなぎ」。
楽譜のタイトルを見て、柳とあるので、枝が垂れているのを想像してしまいました。
しかも、しだれ柳と言えば、お化けとセットで夏のイメージ。
北欧っぽくないな…なんて思っていました。
調べたら、ポプラのことなんですね。
きちんと調べなければいけません。
「ポプラ」と表記されているタイトルもたくさんありました。
やはり真っ直ぐ上に伸びるたくましい木。
第4曲は「白樺」。
5曲の中では、明るい曲です。
どうしても少し速く弾きたくなってしまう…
まだまだ理解が及びません。
後半の「Misterioso」は水面に映った木の様子のようです。
何となく夜の暗い雰囲気を感じます。
『樹の組曲』を続けて弾くと、最後の「樅の木」が自然に弾けます。
何が違う?
テンション?
温度?
わかったような、わからないような…
でも、自分の弾き方は定まった気がします。
それでも不安な私は、5曲まとめてレッスンに持って行き、先生に聞いていただきました。
2回目のレッスンで「仕上がってるね!どこかで弾いたら?」と言ってもらえて、ご機嫌な私。
でもまだ、自分の中では半分の出来。
そして、披露する場は無いのですけれどね…
これからは、少し自信を持って「樅の木」を演奏できるでしょう。