2021年2月10日

揺れるメトロノーム

便利な世の中になって、スマホがあれば事足りるようになってきました。

気になることがあったら、とりあえずインターネットで検索。
CDを買う前に、とりあえずYouTube。
録音再生もスマホでできますし、メトロノームもチューナーもアプリがあります。

便利だと思ってダウンロードした、メトロノームのアプリ。
確かに出先で必要になった時には重宝します。
昔は、時計の秒針を見て速度を取っていましたから…

ただ、アプリのメトロノームや電子メトロノームは、何だか使いづらい。
何故か何故かと考えて…

ピッピッと鳴るその音に、音楽的な動きがないからだと思うのです。


拍には、動きや重みがあるもの。
振り子のメトロノームは、振られた左右の打点で音が出ているので、音の出方には自然な動きや重みがあるように思います。
かけられたエネルギーの分だけ音が出るのです。

それに比べて、電子メトロノームは、タイミングが来たらピッピッと鳴るだけ。
右にも左にも、前にも動かない。
「よーいドン!」の「よーい」がなく、いきなり「ドンッ!」と言われているようなものです。
「よーい」があるから、その後のスタートを準備しておいて、スタートを合わすことができるのです。

メトロノームでも、誰かと一緒に演奏する時でも、拍が合うのは、その打点が来る前から既に呼吸が合っているからです。

小学生の女の子。
メトロノームに合わそうとすると、どうしても合いません。
少しずつ遅れていってしまい、気が付いて追いつこうとすると、今度は追い越してしまって、メトロノームより速くなってしまいます。
そして、またゆっくりにして遅れてしまい、それの繰り返し。
テンポは揺れに揺れ、合わすことに意識が行き過ぎて、弾く方もおろそかになってしまいます。

メトロノームでは合わないのに、私が隣で手を叩くと、しっかり合わせてくれます。
テンポを取るために手を叩く時は、お猿のシンバルのような直線の動きではなく、大げさに円を描くようにして叩きます。
そうすることで、次の拍の打点に向かうエネルギーを感じられます。
そのエネルギーに乗ることができれば、拍が合うようになります。

合わせるのは、拍の打点ではなく、拍に向かうエネルギーや呼吸。
メトロノームのカチッと鳴る音に合わせるだけなら、それは反射神経ゲームです。

電子メトロノームは、反射神経ゲームになりがちです。
そして、こちらがどれだけ拍と拍の間に動きを付けても、それに応えて動きを付けてくれることはありません。
なんだか寂しいですね。

振り子のメトロノームが心地よいのは、一緒に演奏しているように感じるからでしょうか。
大きくて持ち運びには不便でも、アナログな振り子の良さがあるのです。


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