小学生の生徒さんが練習している曲。
曲の途中、フレーズとフレーズの繋ぎになる音にrit.(リタルダンド、次第に遅く)が付いています。
1つめの音から充分過ぎるくらい長くなるので、急ブレーキ!
曲の前後を考えると、急ブレーキは、あまり美しくありません。
私が弾くのを聞いて真似してもらったり、「1つめの音は変わらないくらい、次は少しだけ長くして、次は長ーく」と伝えてみたり、音の長さを線で書いてみたり…
それでも、どうしても違和感のある弾き方をするので、いろいろ弾いて、聞いて、研究しておいでと宿題を出しました。
研究しても答えが出てこなかったら、rit.を外してテンポを変えずに弾いておいで、と、伝えました。
さて今週のレッスン。
通して弾いてもらうと、rit.は無くなっていました。
答えが出なかったかー。
どうしたい?と聞くと、やっぱり、最初の音から結構な長さで弾きたいようです。
楽譜には、rit.と同時にdecresc.(デクレシェンド、次第に弱く)が書かれています。
次第に弱くなので、1つめの音はまだ弱くなくて良いのですが、長く弾くなら音が強すぎる気がします。
1つめの音からもっと弱い音で弾いてみよう。
それである程度バランスが取れて、良くなりました。
その部分全体を、その生徒さん流に変えるしかないようです。
これでどう?と聞くと、いいですと言ってくれました。
そして、生徒さんが私の方を向いて「先生ありがとうございます」と言いました。
いきなりのお礼!
思わず「何が?どうしたん?」と聞きました。
生徒さんは「私の弾きたいように弾かせてくれてありがとうございます」と言いました。
クラシックにおいては、楽譜通り弾くことが大前提になります。
楽譜の中身を理解した上で、生徒さんが弾きたいように弾くことは、楽譜通り弾くことよりも、もっと大切なことかもしれません。
その「弾きたい」の中身を充実させてあげることが、レッスンなのですよね。
「ありがとう」と言われて、とても喜ぶ先生なのでした…