2022年1月9日

痛い!痛くない!痛い!

昨年(2021年)の10月20日、指先を怪我しました。
料理をしていてキャベツの千切りでスライサーを使っていたら、指も一緒にシューッと…
指先が削がれてしまいました。

血は止まらず、消毒もガーゼもあるのかないのかわからず、指先をおさえたまま部屋を3周ほどウロウロ。
混乱しながらどうすべきか一生懸命考えて、とにかく血が止まらないので皮膚科へ。
痛みよりも、出血よりも、ピアノが弾けないことに絶望…
一週間後にピアノを弾く大事な予定があるのですから!
ショック死するかと思いました。


大きな声で言うにはちょっと恥ずかしいのですが、実は夏からコンクールに挑戦していました。
ちょうど一週間後は予選の2回目。
辞退したって誰に迷惑がかかるものでもありませんが、そんなことは自分が許せません。

看護師さんに、一週間後にピアノが弾けるか聞いてみると、とにかく当分は練習できないだろう…
もしも薄皮が再生されれば、何とか指先を守りながら弾けるかもしれないとのことですが、一週間で薄皮ができるかどうか。

割と本気の曲を本気で弾くんです。
ガンガン弾くんです。

…間に合いますか?

日は経てど、全く痛みがなくなる気配もなく、傷口に皮ができている気配もなく、ピアノなんて到底弾ける気配もなく。
ガーゼでぐるぐる巻きにしていますが、コツンっと当たると激痛。
ピアノどころか、普通に日常生活でも気をつかうほどです。

本番前日。
朝にお皿の縁に当たった指先は悶えるほど痛く、出場辞退の連絡をしなければと思いました。
それでも悔しくてなかなか諦めきれず、そして単純に電話が苦手なために気が進まず、スマホを持ったままうろうろして、事務局に電話が繋がる17時を過ぎてしまいました。

本番の日の朝。
ん?
痛くない気がする!

ガーゼを巻いたままの指ですが、ピアノを弾いてみると、当たり所が悪いと痛いものの、弾けるのです!
キズパワーパッドの貼り方を少し変えて、黒鍵と黒鍵の間に指が入るようにガーゼの巻き方を変えると、まあ何とか弾けるのです!

絶対に弾けないと思っていたのが、当日の朝に痛くないなんて、嬉しくて嬉しくて。
張り切ってホールまで車を走らせます。
運転をしながら、指先でハンドルを叩いてみます。
舞台袖で最後にガーゼの具合をチェックして、トントンと壁を叩いて、大丈夫。
何とか弾けそう…
もちろん満足には弾けませんでしたし、練習もしていなかったので思い通りの演奏とは程遠かったのですが、とにかく弾ききれたことに満足。

さて、あくる日。
ピアノを練習…、と思って弾き始めたのですが、痛い!痛い!
痛くて弾けない!
なんで?
昨日弾けたのに…

ガーゼとキズパワーパッドを剥がして傷の状態をチェックしてみると、そこには薄皮なんてまだ出来ていなくて、肉が見えていました。
どう考えても、ピアノを弾ける指ではありません。

人間の欲求というのは、痛みも飛ばしてしまうのですね。
アドレナリンという物ですか?
興奮状態になると痛みを感じにくくなるそうです。

そして、ピアノを弾きたいという思いがそんなに強かったのかと驚くと同時に、ピアノに対するモチベーションがきちんとあることに安心しました。

この状態で信じられないことにコンクールは通過。
12月、東京での最後の大会へ出場してきました。

さすがに2ヶ月が経ち、困ることなくピアノが弾けるまでに指は回復し、素晴らしいホールで素晴らしいピアノで、思いっきり演奏しました。
集まっているのは全国から選ばれた人たち。
他の方の演奏は上手に聞こえるし、自分の演奏はアラばかり聞こえるし…です。

翌日、点数と結果が発表されました。
5人の審査員のうちお一人の先生が、満点をつけてくださっていて、すごく嬉しい!
満点なんて、なかなかいただけないものです。
おまけに、会場最高得点で入賞させていただきました。

後日、賞状が届きました。
何年ぶりの賞状?

そんなこんなで、絶望からの幸せな年末年始を過ごさせてもらいました。
不自由なくピアノが弾けるって、ありがたいことですね…

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