2022年5月14日

≪今週のレッスン Vol.231 5/14≫ 速度か表情か

音楽用語でvivace(ヴィヴァーチェ、活発に)という言葉があります。

ブルクミュラー(1806~1874年)の「狩り」を練習している生徒さん。
曲の初めに「Allegro vivace」と書かれています。


読み方と意味わかる?と聞くと、Allegro(アレグロ、速く)はわかるけれど、次の単語がわからないと答えました。
レッスンの時間に余裕があったので、一緒に調べてみることにしました。

辞書を引くのも良いですが、最近はスマホで検索すれば音楽用語も出てきます。
Yahoo!の検索窓に「vivace」と入れると、「ヴィヴァーチェ、活発に」とすぐに読み方と意味が出てきました。

数年しかピアノを弾いていない小学生の生徒さんは、「活発に」という言葉をその言葉通り表情や弾き方だととらえました。
生徒さんが調べた意味は確かに「活発に」で、そこに速度に関する情報は何も書いていませんでした。

私は、vivaceと書かれていればもちろん活発ではあるのですが、「速い」というイメージ。
それこそ学生の時は試験に備えて楽語をひたすら丸暗記したこともありましたが、今となっては「vivace」は「vivace」。
日本人が「明るい」という言葉をそのまま「明るい」と理解するくらいの感覚で、vivaceはvivaceなのです。
ですから近頃は、わざわざvivaceを調べることもありませんでした。

あれ?vivaceは速度用語じゃなかった?と、少し不安になる私…
レッスンの後、調べてみました。

学生の頃から使っている楽語辞典を引いてみると、「はやく、いきいきと」と書かれています。
楽典の本には「活発に」と書かれていましたが、速度用語の欄で速い部類の所に書かれていました。
やっぱり、速度を示すものです。

さらに調べてみました。
イタリア語を翻訳すると、「活発」や「すばしこい」という意味です。
17世紀後半から音楽用語として用いられるようになりましたが、元々は速度を表す言葉ではなく、言葉そのままの意味で使われていました。

18世紀半ば頃、「Allegro vivace」のように、速度用語と一緒に用いられるようになりました。
そして、次第に速さを表す用語へと変化していきました。
いきいきとした活気のある音楽は、ある程度の速さを持っていることが自然です。

さて、ブルクミュラーの「狩り」には「Allegro vivace」と書かれています。
「狩り」が収録されている『25の練習曲 Op.100』が出版されたのは1851年。
ブルクミュラーがvivaceを速度を示す用語として使ったのかどうかはわかりませんが、この曲の適切な速度は、恐らく今の時代のvivaceほど速くないと思います。
目まぐるしく速く弾くというよりは、リズム良く弾く感じの曲です。
まさに「活発に、いきいきと」。
どちらかというと、生徒さんの解釈の方が正しかったのですよね。

毎回、生徒さんからたくさん学ばせてもらっています。
ありがとうね!

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