発表会が近づいてきました。
もう既に安心して聞けそうな生徒さんもいますし、仕上がるのかどうかハラハラする生徒さんも…
小さな生徒さんたちの曲は、普段レッスンの曲と同じように練習していけば仕上がります。
楽譜をしっかりと読んで正しく、そして楽しく弾くのです。
レベルが上がってくると、仕上がるまでに時間が必要です。
曲は長くなりますし、1曲の中にたくさんの要素があって、いろんな音色を使わなければなりません。
いつものレッスンの曲とは違う練習が必要です。
レッスン内容も変わります。
それに、曲に表情をつけて歌って弾くことが必要で、テクニックだけでなく表現力が要ります。
さて、選曲の話です。
誰にどんな曲をお薦めするか。
せっかくの舞台ですから、本人が気に入って楽しく弾ける曲でなければなりません。
そして、いつものレッスンよりも少し背伸びをして、それでもきちんと仕上がる曲で、本人に合っている曲。
弾ける曲のレベルもありますし、発表会までの伸びしろもありますが、それよりも大きなことがあります。
それは、普段のレッスンの受け方や練習の仕方、それから、表現力です。
伝えたことをきちんと1週間で真面目にこなしてくる生徒さん。
直さなければいけないところをきちんと聞いて帰り、家できちんと練習します。
ですから、たいていどんな曲でも安心して渡すことができます。
楽譜には必要なことの最低限が書かれています。
楽譜通りに弾くことが出来れば、曲の骨格はできているはずですので、それでそこそこの演奏になります。
バロックや古典派の曲であれば、少し難しいかな?と思うくらいの曲でも、大丈夫のようです。
ですが、楽譜通りに弾くだけでは素敵な演奏にはなりません。
楽譜に忠実なだけの演奏なら、コンピューターがすれば良いのです。
弾く人によって違う演奏になるのは、音色や表現が演奏者によってそれぞれ違うからです。
曲に表情をつけることや歌うことは、外からの力ではなかなか難しく、本人が持っている力に頼るところが大きいです。
自然に表現できる生徒さん、こちらから促すと表現しようとする生徒さん、なかなか表に出すのが難しそうな生徒さん…
表現のレッスンは難しいです。
私が、ここからここまででどれくらいcresc.(クレシェンド、だんだん強く)しましょうと言っても、それを機械的にする生徒さんと、自然に音楽の流れに乗ってできる生徒さんがいます。
cresc.するということは、テレビのボリュームを上げていくのとは全く違います。
そこには、音量だけではなく、エネルギーやテンション、景色や気持ちなどいろんな物が加わって変化していきます。
それを全て言葉で説明するのは、なかなか難しいものです。
そもそも、誰かの表現の真似をしてもダメで、本人の内から出てこないと、どれだけ外側からアドバイスをしたって、不自然なのです。
演奏する本人が、どうしたいか、どう伝えたいか。
レッスンで話をしてくれる時に、棒読みで淡々と喋る生徒さんはいません。
もちろん表情もありますし、抑揚や声の大きさも、その話にふさわしいものです。
ですから、全く表現力のない生徒さんなんていないはずです。
それが、ピアノの鍵盤を通してできるかどうか。
きっとそれは、できないのではなく、やるかやらないかの違いです。
正確に弾くことも大切ですが、弾きたい気持ちも大切。
「こう弾きたい!」という思いは、楽譜に書かれていることを超えることができます。
もちろん、表現したいことを表現するためにはテクニックが必要なので、基礎的な練習は欠かせませんよ!
それを飛び越えては、ただの無茶な演奏になってしまうかもしれません…
発表会ですので、普段のレッスンの様子を見て、表現しきれない曲は渡さないようにしています。
まずは、一人一人が持っている音色に合った曲をお薦めしました。
私がお薦めしておきながら、プログラムを見ていると、〇〇ちゃんらしいなーと思います。
これから、まだまだ仕上がりまでに変化がありそうで、発表会当日が楽しみです。