普段教えているわけではないのですが、コンクールなどの時に少しアドバイスをしている小学生の子がいます。
たくさん練習してきました。
ですが、その演奏は、あまり表情がなく淡々と曲が進んでいきます。
楽譜通りに慎重に弾いているのですが、怖々とした音が聞こえてきます。
ひとつ音を出すたびに、これでいい?と音が問いかけてきます。
きっとお家で厳しく言われ、レッスンでも細かくいろいろと言われ…
真面目だから、きちんとしようと思えば思うほど、ぎこちない演奏になるのでしょう。
大変です。
弾かされている感じが丸見えの演奏になってしまいました。
これではいけません。
審査員の先生方は、よく練習しましたね、と、講評用紙に書かれることでしょう。
今日までよく頑張りました、お疲れ様でした、ということです。
曲や演奏を評価していただく以前のことです。
これでは残念です。
もっと、表現しなければなりません。
どう弾きたい?と聞くと「普通な感じ」と言います。
普通とは…
あなたの普通と私の普通は、きっと違うでしょう。
「普通」という言葉は何も伝わらない言葉なのです。
共通認識というものは、いつでもどこでも便利に存在するものではありません。
言葉が見当たらなかったから普通と言ったのでしょうか。
もし、普通に弾けば良い演奏だと評価してもらえると思っているなら、それは大間違いです。
きっと、私のレッスンの仕方に間違いがあったのです。
とにかく楽譜通りに弾くことが「普通」で一番良い演奏だと理解させているのなら、良くないレッスンです。
大反省…
ロボットではなく人間が弾く意味はどこにありますか?
あなたらしい演奏はどんな演奏だと思いますか?
どんな感じの曲?では、大まかすぎて答えられないようなので、細かい質問をたくさん作りました。
次までの宿題です。
景色や場所、温度、明るさや色…
かたさや大きさ…
「硬い」や「大きい」では私はわからないので、「これくらい大きい」のように、きちんと伝わるような書き方をするように伝えました。
さて、翌週。
きちんと書いてきました。
場所は野原で、川も流れているようです。
面白いのは、温度と明るさや色。
「秋の風が吹くくらい」の温度で、「春くらい明るい青緑」なのだそうです。
まさかの季節が2つ。
大人なら辻褄を合わせてしまうようなことも、素直に思ったまま書くのは、さすが小学生です。
匂いや気持ちのところは書かれていませんでした。
匂いは難しかったかな?
気持ちは、一番書いて欲しかったことです。
少し残念…
そして、さらに面白かったのが、かたさや柔らかさの項目。
「お花くらいやわらかい」と書かれています。
私が伝わるように書きましょうと言ったからそうなったのでしょうが、お花くらい柔らかいって何?
わかるような、わからないような…
でも、わかるような。
この子は、面白い子なのです。
これが曲に出てきたら、とても良い演奏になると思うのですが…
まずは楽譜に忠実にと、細かくレッスンし過ぎたでしょうか。
でも、最低限、楽譜に書かれていることは正しく弾かなければなりません。
自由な表現は、その上にあるべきものです。
レッスンのバランスが難しいです…