2022年10月29日

≪今週のレッスン Vol.255 10/29≫ pをそのままpで弾かない

レッスンをしていると、生徒さんから学ばせて貰うことがたくさんあります。
今回は、強弱のことについて考えさせられました。

ショパンの曲の冒頭、とても小さな音で弾かれる生徒さん。
強弱記号はp(ピアノ、弱く)。
出てくる音は、無理やり弱くしているような、聞いていて歯がゆい気持ちになります。


生徒さんは、楽譜にpと書かれているから、弱く弾いています。
何の間違いもないように思えます。
ですが、なぜ自然なpに聞こえないのでしょうか。

強弱記号に従って演奏することは、テレビのリモコンのボリュームをプラスマイナスして音量を調整することと同じではありません。
強弱記号には、単に音の強さや音量だけではなく、エネルギーやテンション、情景や感情など、いろんなことが詰まっているはずです。
「p=弱く」ではなく、どんな音を出したいかが大切です。
強弱としてのpを目標にするのではなく、理解や表現の手掛かりにするということです。
ここの音楽がこうだからpになっているのだ、という、見たままのpから逆方向の理解で演奏しなければなりません。

そんなことを生徒さんと話しながら、見事に自分にブーメラン。

どうしてもppで弾けないところがあります。
無理やりppで弾こうとするから、弾きにくいし、間違えるし、楽しくないし…
一体何を表現したいのか。
結局、それが自分の中にきちんとないのです。
だから出したい音も存在しないし、出せないのです。


「楽譜に正しく」を追い求めすぎると、きちんと出来ているように見えても、中には何も入っていない音楽が出来上がってしまいかねません。

どうしてpなの?
どうしてスラーなの?
どうしてこの指で弾くの?
どうして?

全てのことに自分なりの意味を付けられるくらい、たくさん考えて音楽を作らねば!と思わされるレッスンでした。

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