凄く久しぶりにコンサートへ行ってきました。
パスカル・ロジェ ピアノ・リサイタル
高校生の時から、ドビュッシーやラヴェルのCDを聴いていました。
ですから、パスカル・ロジェはCDの中の人。
何度も聴いた演奏を、生で聴ける日が来るなんて!
プログラムは、サティ「ジムノ・ペディ 第1番」からスタート。
どっしりと座った大柄なロジェさんから出てくるのは、脳内に直接入り込んでくるような不思議な感覚の音楽。
どうやってその音を出している?
こじんまり弾いているように見えるのに、音楽はどんどん広がっていき、ホールの空間が全部ロジェさんの音楽です。
何でそんな魅力的な音を出せるの?
それに、サティもフォーレもドビュッシーもラヴェルも、全部フランス語を喋っている!
フランスを良く知った人にしかできないフランス音楽ですよね。
何も崩れていないけれど自由に崩された音楽で、動いているのにきちんと留まっていて、おとなしく見えて表情はとても豊かで、一体どうなっているの?
同じ楽譜を弾いているとは思えないです。
旋律も和声も楽譜通り同じだけれど、拍の取り方やリズム感、バランスも音色も…
歌い方が全然違うのです。
私が仕上げたと思っていたドビュッシーやラヴェル、それは一体何だった?
「喜びの島」なんて結構良く弾けていたと思っていたのに…
私が弾くドビュッシーやラヴェルは、耳障りの良い音楽ではなかったかもしれません。
気張っていて、お洒落さの欠片もないような、必死で真面目な音楽。
いくらきちんと楽譜を読んでもダメ。
そこには書かれていないニュアンスを汲み取る必要があって、その土台には「文化」があるのです。
音楽は世界共通?
ある程度はそうかもしれないですし、そうであれば非常に有難いのですが、残念ながら完全にはそうではないようです。
どれだけ勉強して練習しても、私には異国の音楽になってしまうのでしょう。
もし、私がフランスに移住して、現地の文化に溶け込んで、フランス人の感覚で生きていけるくらいになれたら、音楽が変わるでしょうか。
CDで何度も聴いたけれど、やっぱり生で聞かなければ!
本当はこんな音を出されているのね…
こうやって弾かれているのか…
CDではなかなか味わえない、空間の感触を楽しんできました。
前半と後半、それぞれ通しで演奏されるので、曲間での拍手はお断りとのことでした。
それでも拍手をしたくなることもあるだろうなんて思っていましたが、どんなに素晴らしい演奏でも拍手をさせていただけませんでした。
曲間、客席が動くのをためらうくらいの空気でした。
アンコールは「喜びの島」と「月の光」。
「月の光」の美しいこと!
フランスで月を見たらこんな風に見えるのだろうか…
景色が見えるというよりも、その場所に連れて行かれてそこに居る感覚。
もう、そこは日本ではなかったです。
フランスに連れて行かれました。
私は、基本的にはドイツものを練習していることが多いですし、今もブラームスを弾いてしていますが、たまにはフランスの作曲家の曲も弾きたいなーなんて思いました。
興味があるのは、ラヴェル「高雅で感傷的なワルツ」や、プーランク 「ナゼルの夜会」。
気軽にお洒落に弾けたらカッコいいけれど、ど真剣に全力で弾いてしまうんだろうなー